2018年12月1日

対応の部分集合による定義

前回のエントリー「対応と写像の定義【予告編】」の続き,対応の部分集合による定義である.

拙著「集合論」を読まれた方には見慣れた書き方と思うが,私の「書式」には本文がほとんど無く,「定義・定理・証明・補足 」が淡々と続く.以下でもその方法を踏襲している(自分で「タナカ式」とよんでいます).

スマホで見る方は,LaTeXのソースが表示されていると思うので,一番下までスクロールして「ウェブバージョンを表示」をクリックしてみてください.
 
$\newcommand{\krc}{,\,}$ $\newcommand{\KRMapByGraph}[3]{\left(#2\krc #3\krc #1\right)}$ $\newcommand{\krcc}{,\;}$ $\newcommand{\KRMap}[3]{#1:#2\to #3} \newcommand{\KRMapp}[3]{#2\overset{#1}{\longrightarrow}#3} \newcommand{\KRMapGraph}[1]{G\left(#1\right)} \newcommand{\KRSetC}[2]{\left\{#1\;\middle|\;#2\right\}} \newcommand{\KRMapImgElm}[2]{#1\left(#2\right)} \newcommand{\krEmptySet}{\varnothing} \newcommand{\KRMapTo}[2]{#1\mapsto#2} \newcommand{\KRMapMapTo}[5]{\KRMap{#1}{#2}{#3}\;;\;\KRMapTo{#4}{#5}} \newcommand{\KROrdPair}[1]{\left(#1\right)} \newcommand{\KRMapDomain}[1]{D\left(#1\right)} \newcommand{\KRMapRange}[1]{V\left(#1\right)} \newcommand{\KRMapComposite}[2]{#2\circ#1}$

定義(対応).$A\krc B$ を集合,$G$ を $A\times B$ の部分集合とする.このとき,組 $\KRMapByGraph{G}{A}{B}$ を
  • $A$ から $B$ への対応(correspondence)
という.


補足.対応をあらわす記号として
\[
f\krcc g\krcc\dots\krcc F\krcc G\krcc\dots\krcc\varGamma\krcc\dots
\]
などがよく用いられる(とはいうものの,$\varGamma$ 一択のような気もする).


補足.対応 $\varGamma=\KRMapByGraph{G}{A}{B}$ を,
\[
\begin{align*} & \KRMap{\varGamma}{A}{B}\\ & \KRMapp{\varGamma}{A}{B}\end{align*}
\]
などとよくあらわす.


定義(対応のグラフ).対応 $\varGamma=\KRMapByGraph{G}{A}{B}$ が与えられているとする.このとき,$G$ を
  • 対応 $\KRMapByGraph{G}{A}{B}$ のグラフ(graph)
といい,
\[
\KRMapGraph{\varGamma}
\]
とあらわす.


定義(対応による像).対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ が与えられているとする.このとき,$a\in A$ に対して,
\[
\KRSetC{b}{\left(a\krc b\right)\in\KRMapGraph{\varGamma}}
\]

  • $\varGamma$ による $a$ の(image)
といい,
\[
\KRMapImgElm{\varGamma}{a}
\]
とあらわす.


補足.対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ において,$a\krc a'\in A\krc a\neq a'$ に対して,$\KRMapImgElm{\varGamma}{a}=\KRMapImgElm{\varGamma}{a'}$ であってもよい.また,$\KRMapImgElm{\varGamma}{a}=\krEmptySet$ となるような $a\in A$ が存在してもよい.


定義(始集合).対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ において,$A$ を
  • $\varGamma$ の始集合(initial set)
  • $\varGamma$ の始域
などという.


定義(終集合).対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ において,$B$ を
  • $\varGamma$ の終集合(final set)
  • $\varGamma$ の終域
などという.


補足.対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ と $a\in A$ の $\varGamma$ による像 $\KRMapImgElm{\varGamma}{a}$ を
\[
\KRMapMapTo{\varGamma}{A}{B}{a}{\KRMapImgElm{\varGamma}{a}}
\]
とあらわすことがある(のかどうかはよく知らない.写像ではよくあるが,対応ではどうなのか).


定義(対応の相当).2つの対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$,$\KRMap{\varGamma'}{A'}{B'}$ に対して,
\[
\KRMapGraph{\varGamma}=\KRMapGraph{\varGamma'}\krcc A=A'\krcc B=B'
\]
であるとき,
  • $\varGamma$ と $\varGamma'$ は等しい
といい,
\[
\varGamma=\varGamma'
\]
とあらわす.


定義(逆対応).対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ が与えられているとする.このとき,
\[
H=\KRSetC{\KROrdPair{b\krc a}}{\KROrdPair{a\krc b}\in\KRMapGraph{\varGamma}}
\]
をグラフとする対応 $\KRMapByGraph{H}{B}{A}$ を
  • $\varGamma$ の逆対応(inverse correspondence)
といい,
\[
\varGamma^{-1}
\]
とあらわす.


定義(対応の定義域).対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ が与えられているとする.このとき,
\[
\KRSetC{a}{\KROrdPair{a\krc b}\in\KRMapGraph{\varGamma}}
\]

  • $\varGamma$ の定義域(domain)
といい,
\[
\KRMapDomain{\varGamma}
\]
とあらわす.


補足.対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ において,始集合と定義域は必ずしも一致しない.


定義(対応の値域).対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ が与えられているとする.このとき,
\[
\KRSetC{b}{\KROrdPair{a\krc b}\in\KRMapGraph{\varGamma}}
\]

  • $\varGamma$ の値域(range)
といい,
\[
\KRMapRange{\varGamma}
\]
とあらわす.


補足.対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ において,終集合と値域は必ずしも一致しない.


定義(対応の逆像).対応 $\KRMap{\varGamma}{A}{B}$ が与えられているとする.このとき,$\varGamma^{-1}$ による $B$ の要素 $b$ の像 $\KRMapImgElm{\varGamma^{-1}}{b}$ を,
  • $\varGamma$ による $b$ の逆像(inverse image)
  • $\varGamma$ による $b$ の原像
などという.


定義(対応の合成).$\KRMap{\varGamma_{1}}{A}{B}$,$\KRMap{\varGamma_{2}}{B}{C}$ を対応とする.
\[
G=\KRSetC{\KROrdPair{a\krc c}}{^{\exists}b\in B\left(\KROrdPair{a\krc b}\in\KRMapGraph{\varGamma_{1}}\land\KROrdPair{b\krc c}\in\KRMapGraph{\varGamma_{2}}\right)}
\]
とする.このとき,対応 $\KRMapByGraph{G}{A}{C}$ を
  • $\varGamma_{1}$ と $\varGamma_{2}$ の合成対応
といい,
\[
\KRMapComposite{\varGamma_{1}}{\varGamma_{2}}
\]
とあらわす.


補足.(対応の合成の定義はこの通りらしいが,私が今ひとつピンときてないのはナイショ)


参考文献

-

以上,対応の部分集合による定義である.

なにかが抜けているような,なにかが足りないような気がしているが, そのときは適時追加します.

次回のエントリーはおそらく,対応の部分集合の定義に伴う基本命題の証明になると思われる.気長に待たれよ.






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