2017年3月31日

前原昭二「記号論理入門」

私が読んだのは,旧版の方である(新刊は新装版なので,改定はされていないと思う).


本書を読んでみて,気づいた点は以下の通りである;

◆何度も読み返したところが1箇所

第1章 §2「命題と命題関数」において,
  • 変数を含んでいる命題は,今は命題とは考えない
  • このように限定して考えることは,あくまでもここしばらくの話で
とあり,その直後に,
  • <変数を含む命題>はどのように考えるのか 
と述べている.

それらは,なんということもない文章なのだが,
  • 変数を含んでいる命題は,今は命題とは考えない
というのを,私は
  • その話題を後回しにする
ととらえたため,「命題関数」に置き換わった「変数を含む命題」が,その直後から頻繁に出てくることに少し混乱した.

この部分を
  • ここしばらくは「変数を含む命題」を「命題関数」と考え,命題と命題関数は別物として扱う
という風に書いてくれれば,迷うことはなかった.

(ここで,引っかかったのは私だけだろうか)


★詳しく丁寧な説明

「であります」調に違和感を感じる人がいるかもしれないが,全般に渡り,詳しく丁寧に説明してくれる教科書だ.


◆それでもわからないところがある

全体に渡り詳しい説明があるのだが,それでもわからないところがある.演繹における仮定の除去がそれである(第2章 §1).

例えば,次の演繹;

\(\dfrac{\dfrac{A\quad A\rightarrow B}{B}\quad\dfrac{A\quad A\rightarrow\left(B\rightarrow C\right)}{B\rightarrow C}}{C}\)

の場合,前提 \(A,\, A\rightarrow B,\, A\rightarrow\left(B\rightarrow C\right)\) から \(C\) が導かれるというのはわかる.しかし,そこから,

\(\dfrac{\dfrac{\overset{1}{A}\quad A\rightarrow B}{B}\quad\dfrac{\overset{1}{A}\quad A\rightarrow\left(B\rightarrow C\right)}{B\rightarrow C}}{\dfrac{C}{A\rightarrow C}\quad1}\)

として,仮定 \(A\) を除去すれば,前提 \(A\rightarrow B,\, A\rightarrow\left(B\rightarrow C\right)\) から \(A\rightarrow C\) が導かれるというが,それが妥当なのかどうかの説明がない.

この部分に説明があればよかったのだが.

鹿島亮「数理論理学」にはその辺りの説明が,詳しくなされているようだが,まだ読んでいない)


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説明が詳しすぎて,頭の中が迷走してしまう個所も多々あるが,そこには目をつぶっている.





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2017年3月16日

鈴木晋一「集合と位相への入門」

タイトルに「集合と位相」と書いているが,そうではなさそうである.



本書を読んでみて,気づいた点は以下の通りである;

★問の解答をすべて載せている

しかも,略解ではなく,完全な解答である.

こういうことは当たり前のことであり,本来なら,良い評価にはならないはずだ.

しかし,当たり前ではない教科書が多い以上,評価せざるを得ない.


◆タイトルがおかしい

タイトルに集合とついているが,集合について述べているのは二十数ページである.
タイトルに位相とついているが,位相について述べているのは,十ページである.

タイトルにはないが,論理について9ページある.
タイトルにはないが,実数について40ページ以上ある.
タイトルにはないが,ユークリッド空間についても40ページ以上ある.

タイトルにはないから,距離空間については6ページだけ.

これなら,
実数とユークリッド空間への入門
〜 おまけで論理と集合と距離空間 〜
〜 あっ,位相は最後にほんのちょっと 〜
とした方がいい.

「位相」以外の教科書では,こういうことはないように思う.たとえば,
  • 集合と線形代数
  • 集合と代数系
  • 集合と実関数論
  • 集合と数の体系
というタイトルは見かけない.

なぜかは知らないが,「位相」に限っては,タイトルの頭に「集合」という単語をつけなければならないようである.

何か決め事でもあるのだろうか.


◆ \(n\) 次元ユークリッド空間の定義がおかしい

1次元ユークリッド空間 \(\mathbb{R}^1\) の直積 \(\mathbb{R}^n\) をユークリッド空間とよぶ,と定義したあとで,\(\mathbb{R}^n\) にユークリッドの距離を導入したものをユークリッド空間という,と定義している.

どちらがユークリッド空間なのだろうか.

1次元ユークリッド空間の直積には,ユークリッド距離が導入されていることになるのだろうか.それならば,わざわざ \(\mathbb{R}^n\) にユークリッド距離を導入する必要はない.

本書によれば,ユークリッド距離を導入してもしなくても,\(\mathbb{R}^n\) はユークリッド空間というらしいのだが,これを信頼する勇気は私にはない.

なお,距離空間の定義は,ユークリッド空間の定義とは違い,まともである.

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同著者の教科書「位相入門」の中のユークリッド空間と距離空間の定義は,本書のコピペでした.





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2017年3月13日

「集合論(数学で行こう)」第7版

自著「集合論(数学で行こう)」の第7版をAmazon Kindle にて公開した.



改訂個所は以下の通り;

★(変更個所)

  •  §3.1を数列として再構成した.

第6版で,§3.1を「数列と写像」としておきながら,「数列」を定義していないことに気づいた.
今までどこを見ていたのかと思うのだが,これも執筆とその確認を一人で行っている故だ.

また,再構成する際,族を定義してから,族の特殊なものである「列」や「数列」を定義する流れにしたかった.

列や族と写像を同一視するという考え方が(私には)ピンときていなかったので,有限列・無限列から構成的に定義し,数列の定義のあとに,写像と数列の関係について補足する方法をとった.
(書き上げたあとでは,どちらの方法でもそれほど変わらないようにも思える)


1ヶ月かけて,改訂個所がたったのそれだけかといわれると,確かにその通りだ.自分でも仕事が遅いと思う.

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※第6版またはそれ以前の版を購入された方が,最新の版をダウンロードするには,Amazonのサポートに依頼する必要があるようです.手順を紹介したサイト・ブログ等を「Kindle 改訂版 ダウンロード」で検索して下さい.お手数ですがよろしくお願いします.

※本書を書いた経緯については「集合論の本(冊子)を書いた」をお読み下さい.




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