本書を読んでみて,気づいた点は以下の通りである;
★問の解答をすべて載せている
しかも,略解ではなく,完全な解答である.こういうことは当たり前のことであり,本来なら,良い評価にはならないはずだ.
しかし,当たり前ではない教科書が多い以上,評価せざるを得ない.
◆タイトルがおかしい
タイトルに集合とついているが,集合について述べているのは二十数ページである.タイトルに位相とついているが,位相について述べているのは,十ページである.
タイトルにはないが,論理について9ページある.
タイトルにはないが,実数について40ページ以上ある.
タイトルにはないが,ユークリッド空間についても40ページ以上ある.
タイトルにはないから,距離空間については6ページだけ.
これなら,
実数とユークリッド空間への入門
〜 おまけで論理と集合と距離空間 〜
〜 あっ,位相は最後にほんのちょっと 〜
とした方がいい.「位相」以外の教科書では,こういうことはないように思う.たとえば,
- 集合と線形代数
- 集合と代数系
- 集合と実関数論
- 集合と数の体系
なぜかは知らないが,「位相」に限っては,タイトルの頭に「集合」という単語をつけなければならないようである.
何か決め事でもあるのだろうか.
◆ \(n\) 次元ユークリッド空間の定義がおかしい
1次元ユークリッド空間 \(\mathbb{R}^1\) の直積 \(\mathbb{R}^n\) をユークリッド空間とよぶ,と定義したあとで,\(\mathbb{R}^n\) にユークリッドの距離を導入したものをユークリッド空間という,と定義している.どちらがユークリッド空間なのだろうか.
1次元ユークリッド空間の直積には,ユークリッド距離が導入されていることになるのだろうか.それならば,わざわざ \(\mathbb{R}^n\) にユークリッド距離を導入する必要はない.
本書によれば,ユークリッド距離を導入してもしなくても,\(\mathbb{R}^n\) はユークリッド空間というらしいのだが,これを信頼する勇気は私にはない.
なお,距離空間の定義は,ユークリッド空間の定義とは違い,まともである.
-
同著者の教科書「位相入門」の中のユークリッド空間と距離空間の定義は,本書のコピペでした.
↓クリックしてもらえると励みになります.タナカのAmazonセレクションはこちら→(タナカの店)
にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿