2016年11月22日

大田春外「はじめての集合と位相」

この本にも何度か助けられた.が,気になる点がある.


集合論の部分を読んでみて感じたところは,以下の通りである.


★問の解答はすべて付けている.
こういうことは当たり前であるから,本来は評価の対象にはならないものだ.

一方,章末の演習問題には一切解答を付けないという徹底ぶりである.ある種の清々しさを感じる.


◆対応の定義が写像の定義のあとから出てくる.
定義3.6の写像の定義は不完全であると註3.15で指摘しているが,定義3.6での「対応関係」を一般用語と解釈すれば,この写像の定義で十分だと思う.

対応の定義を述べる前の「定義3.6の写像の定義は不完全である」という断りは必要だったのかどうか.

私だったら,註3.15の中で「写像を一般化した対応の定義を述べる」と書いて,続ける.

また,註3.15程度の内容であれば,写像の定義の前に対応の定義を挿入してやれば,それで十分である.

わざわざ読み手を混乱させるように構成した意図が私には分からない.


◆対応の定義を書くなら,始域の定義もあった方が良い.
対応の定義を書くなら,始域(始集合)についても書いた方がいい.

写像の場合は,定義域と始域は一致するから,定義域だけでも問題ないだろう.

しかし,対応の場合は,定義域と始域が一致しない場合があるから,それらを区別するためにも,始域の定義はあった方が良いと考える.


▲差集合の定義
このエントリーを書くにあたって,改めて同書を確認していたのだが,差集合の定義の文言が変である(定義1.17 p8).

「集合 \(A-B\) を \(A\) から \(B\) をひいた差集合という」と書いてあるが,これは「集合 \(A-B\) を差集合という」とした方がいいように感じる.

前者の表現だと,差集合には種類があって,そのうち「集合 \(A-B\) で定義される差集合」を「 \(A\) から \(B\) をひいた差集合」というのだと解釈できうる.

「 \(A\) から \(B\) をひかない差集合」というものがありそうである.

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いつも通りの重箱の隅をつつく内容だが,気にし出すと放っておけなくなる.



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2016年11月12日

「集合論(数学で行こう)」第3版

自著「集合論(数学で行こう)」の第3版をAmazon Kindle にて公開した.



主な改訂個所は以下の通り;

★付帯的な説明を「定義・注意・補足・規約」として再構成した.

★パラグラフの構成を再検討した.
証明内の数式を行内から独立数式にすることで,見た目を改善した.これにより, 紙面が「白く」なり,べた書きの読みにくさは軽減されたと思う.

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その他,誤植に相当する間違いは,見つけたものは修正した.

内容は殆ど変わっていないが,見た目はかなり変わった.

説明の足りない個所・追加した方が良い項目等,今回の改訂で積み残した部分がまだある.これは第4版で修正する予定だ.

また,第4版を製本版として出版することも考えている.



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2016年11月1日

小林貞一「集合と位相」

コンパクトな教科書であるが,この本がなければ,自著「集合論」は完成しなかったかもしれない.


集合論の部分を読んでみて感じたところは,以下の通りである.

★定理の証明・問の解答を省いていない
定理の証明,問や章末問題の解答は省略せずにすべて書いてあるようだ.

私が目の敵にしている「証明・解答の省略」は,この本にはなかったように思う.見た限り,少なくとも略解・ヒントは載せてある.

こういう当たり前のことで,評価が甘くなるというのも変な話ではある.


★センスの無い例え話もない
集合の対等に関する,リンゴのたとえ話はどうなんだということはあるが,御愛嬌ということで流す.

また,全体的に読みやすい文章である(引っかかる文章が見当たらなかったという方が正確かもしれない).


◆ツォルンの補題は省かれている
順序数については書いてあるが,ツォルンの補題については省かれている.

位相には関係ないから省いたのかもしれないが,本のタイトルに「集合」とある以上,集合に関しては一通り書くべきだ.


◆新刊では入手できない
オンデマンドでも電子書籍でも良いので,新刊で購入できるようになることを願う.

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付帯的な説明は少なめで,要点を手際よくまとめたという印象である.




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