2017年5月10日

松坂和夫「集合・位相入門」(3)

読んでいて引っかかったところの話である.



第3章 §2 D) 整列集合の比較定理(103頁)


定理4(比較定理)の証明の中で
  • b)x,yJ;x>y ならば f(x)>f(y)
  • b) によって,fJ から J への順序同型写像である(104頁・下から6行目)
と書いてある.

(なお,証明内において,J,J はどちらも整列集合である;すなわち全順序集合である.また,f:JJ は全単射である.)

確かに f は順序同型写像だが,同書の順序同型写像の定義;
  • J,J は半順序集合
  • f は順序単射かつ全射
によれば,すぐにはそういえないはずだ( b) によれば,f は順序単射か?ということ).

というわけで,
  • J は全順序集合
  • J は半順序集合
  • f:JJ は順序写像かつ全単射
の場合も順序同型写像である.なぜなら云々・・・という説明がいる.

(この定義は斎藤正彦『数学の基礎』による(22頁).)

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齋藤の順序同型写像の定義を満たすならば,松坂の順序同型写像の定義を満たすことを証明しておく.

命題;A=(A,A) を全順序集合,B=(B,B) を半順序集合とする.写像 fA から B への順序写像で,かつ全単射であるとき,f は順序同型写像である.

証明;任意の a,aA に対して,
  • f は順序写像であるから,aAaf(a)Bf(a) である.
  • f は単射であるから,aaf(a)f(a) である.
したがって,a<af(a)<f(a) である.

この対偶と,aa は比較可能であることから,f(a)Bf(a)aAa である.

以上より,f は順序単射である.また,f は全射であったから,f は順序同型写像である.

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※私はこういうところでけつまづくのです.

ついでながら,
もよろしくお願いします






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3 件のコメント:

  1. 自分も全く同じ所で躓いたのですが、上の命題の証明で
    f(a)とf(a’)が比較可能というのは必要ないのですか?
    松坂先生の証明の中ではA’、B’に相当すると思われるW,W’が整列集合なのでf(a)とf(a’)が比較可能というのは成り立って命題も成り立つと考えたのですが、的外れの質問でしたら済みません。
    どうかご教授よろしくお願いします。

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    1. 前半……
      f が順序写像であることからしたがうので,その条件を置く必要はないかなと思います.

      (それとは別に,改めて確認すると,記事内の証明は筋が悪いというか,変な感じがするので,後日修正します)

      後半……
      御指摘の通りでいいと思います.

      J,J がともに全順序集合であり,f:JJ が全単射かつ < に関して順序写像であるとき,f は順序同型写像になるので.

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  2. ありがとうございました。
    (2)の方でも質問させて頂いたのでよろしければコメントお願いします。

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