2017年1月18日

ブログ「数学で行こう」

このブログについてである.


数学の本の書評について,ときに重箱の隅をつついて,嫌みな表現をしている(割と好きである).

対象になる本をこき下ろすつもりで書いているわけではない(内容に対しては上の通りだが,著者の人格には及んでいないはずである).

手を抜いていると感じるところ,不完全であると感じるところ,書き手の独りよがりではないかというところなどを指摘しているだけである(重箱の隅を重点的に).

そういうことをするなと言いたいだけだ(重箱の隅を重点的に).

-

また,このブログの文体はかたい(見てのとおりである).

柔らかい文体で書いてもいいのだが,はっきりと言い切る書き方が私の好みである(多少無理があっても言い切りたい).

だから,文体は変えずにいく(突然変わるかもしれない).




にほんブログ村 科学ブログ 数学へ
にほんブログ村
   ↑「集合論」第6版執筆中クリック

2017年1月3日

「集合論(数学で行こう)」第5版

自著「集合論(数学で行こう)」の第5版をAmazon Kindle にて公開した.



主な改訂個所は以下の通り;


★章立ての再構成

第1章「集合と写像」を分割・再構成した.


★誤記訂正

対応の相等・写像の相等の定義の錯誤を訂正した.
その他誤記を修正した.


★空集合の記号の変更

空集合を表す記号を\(\phi\)から\(\varnothing\)に変更した.


★各集合の定義の文言を統一

補足1.1にしたがい,各集合の定義の文言を「〜からなる集合」「〜を要素とする集合」に概ね統一した.




にほんブログ村 科学ブログ 数学へ
にほんブログ村
   ↑クリックしてもらえると励みになります.

2016年12月27日

嘉田勝「論理と集合から始める数学の基礎」

いつもと同じ調子でいく.



集合論の部分を読んでみて感じたところは,以下の通りである.

◆集合の定義

1.1.1節「集合とは」の中の「集合は,同一の要素を2個以上持つことはありません」というのがまるで定理のようだ.証明できるのだろうか.

こういう思い切ったことは私には書けない.「同一の要素が2個以上含まれるときは,これを1つの要素と見なす」という但し書きを付けるのが精一杯である.

著者の言う通りなら「同一の要素を2個以上持つ集まりは,集合ではない」ということになるが,許されるのだろうか.

しかも,1.1.2節「集合の書き表し方」において,\(\{1,\,1,\,2,\,3,\,4\}\)という集合を許しているではないか.「1度だけ書くのと同じ」と態度が軟化している.

「\(\{1,\,1,\,2,\,3,\,4\}\)は集合ではない」ぐらいは言ってほしいものだ.

複数の専門家と出版社が原稿に目を通しているはずなのだが,誰も何も言わなかったのだろうか.

◆集合の相等の定義

1.1.1節「集合とは」の中の「集合の相等」における集合の相等の定義で,「2つの集合\(A\)と\(B\)がが持っている要素が同じとき」と書いているが,この書き方では,解釈に幅が出るのではないか.

そこだけを見ると,同じ集合である\(\{a,\,b,\,c\}\)と\(\{a,\,b,\,c,\,c\}\)とが,異なる集合になってしまう(と私には思える).

なお,同書では,集合の定義において「同一の要素を2個以上持つことはありません」と書いて,上のことを回避している.

もっとも,本書の記述に従うなら, \(\{a,\,b,\,c,\,c\}\)は集合ではないから,\(\{a,\,b,\,c\}\)と\(\{a,\,b,\,c,\,c\}\)は,同じ集合でもなければ,異なる集合でもないが.

◆部分集合と真部分集合

「コラム[2] 部分集合と真部分集合」で,部分集合を表す記号に「\(\subset\)」を用いる理由を書いているが,無理がある.

重要性が低いというのは(今回の場合)理由にならない.

「同一視できるから,この記号を使う 」というのであれば,わかるが,「真部分集合の重要性は低いから,部分集合はこの記号を使う」のは,理由になっているとは思えない.

部分集合を \(\subseteq\) で,真部分集合を \(\subset\) であらわすのは,同書の脚注に書いてある通り,大小関係を表す記号\(<,\,\leqq\)からの連想であり,自然であると考える.

重ねていうが,このケースにおいて「あちらの重要性が低いから,こちらではあちらの記号を使う」というは理由にならない(なっていない).

「本書では部分集合を表す記号に「\(\subset\)」を用いる」とだけ書いておけば,それでいい.理由付けは余計だ.


★他書にはない情報がある
空集合を表すのによく使われる記号 \(\phi\) が正式なものではないというのは,この「コラム[1] 空集合の記号」で知った.

空集合の記号は書物によって異なるのだが,これは著者の習慣によるものだと思っていた.

なお,\(A\cap B\)と\(A\cup B\)を「\(A\)かつ\(B\),\(A\)または\(B\)」と読んでいたのは私である(コラム[4] 集合の記号の読み方).

-

納得できる部分とできない部分との差が激しい本である.



にほんブログ村 科学ブログ 数学へ
にほんブログ村

2016年12月19日

「集合論(数学で行こう)」第4版

自著「集合論(数学で行こう)」の第4版をAmazon Kindle にて公開した.



主な改訂個所は以下の通り;

★「〜から成る集合」の定義を修正した.

誤読される表現だったので,これを修正した.

★直和の定義に,直和の表記を追加した.

これに伴い,直和の表記の適用箇所を修正した.

★対応・写像の記述を再構成した.

対応の節で定義した用語を写像の節で用いる場合,重複をいとわず,改めて定義するようにした.
(写像ことはできるだけ写像の節だけで完結させ,対応の節を読み返さなくてもいいようにしたかったため)

★順序集合に関する注意を追加した.

本書では「順序」を「半順序」の意味で,「順序集合」を「半順序集合」の意味で用いている.このことを注意として明記した.

★誤字脱字を修正した.

LaTeXの自作マクロのタイプミスによる,数式の錯誤他を修正した.

◆製本版を延期

第4版を製本版としても販売する予定だったが,これを第5版以降に延期する.
(再構成を検討した方が良い個所,追加した方が良い項目など,見直すべき個所が増加したため)



にほんブログ村 科学ブログ 数学へ
にほんブログ村

2016年11月22日

大田春外「はじめての集合と位相」

この本にも何度か助けられた.が,気になる点がある.



集合論の部分を読んでみて感じたところは,以下の通りである.


★問の解答はすべて付けている.
こういうことは当たり前であるから,本来は評価の対象にはならないものだ.

一方,章末の演習問題には一切解答を付けないという徹底ぶりである.ある種の清々しさを感じる.


◆対応の定義が写像の定義のあとから出てくる.
定義3.6の写像の定義は不完全であると註3.15で指摘しているが,定義3.6での「対応関係」を一般用語と解釈すれば,この写像の定義で十分だと思う.

対応の定義を述べる前の「定義3.6の写像の定義は不完全である」という断りは必要だったのかどうか.

私だったら,註3.15の中で「写像を一般化した対応の定義を述べる」と書いて,続ける.

また,註3.15程度の内容であれば,写像の定義の前に対応の定義を挿入してやれば,それで十分である.

わざわざ読み手を混乱させるように構成した意図が私には分からない.


◆対応の定義を書くなら,始域の定義もあった方が良い.
対応の定義を書くなら,始域(始集合)についても書いた方がいい.

写像の場合は,定義域と始域は一致するから,定義域だけでも問題ないだろう.

しかし,対応の場合は,定義域と始域が一致しない場合があるから,それらを区別するためにも,始域の定義はあった方が良いと考える.


▲差集合の定義
このエントリーを書くにあたって,改めて同書を確認していたのだが,差集合の定義の文言が変である(定義1.17 p8).

「集合 \(A-B\) を \(A\) から \(B\) をひいた差集合という」と書いてあるが,これは「集合 \(A-B\) を差集合という」とした方がいいように感じる.

前者の表現だと,差集合には種類があって,そのうち「集合 \(A-B\) で定義される差集合」を「 \(A\) から \(B\) をひいた差集合」というのだと解釈できうる.

「 \(A\) から \(B\) をひかない差集合」というものがありそうである.

-

いつも通りの重箱の隅をつつく内容だが,気にし出すと放っておけなくなる.



にほんブログ村 科学ブログ 数学へ
にほんブログ村