私に集合論を書くきっかけを与えてくれたのがこの本である.
集合論の部分を読んでみて感じたところは,大体において以下の通りである.
◆納得の押しつけ
たとえば,第1章 §1 D)部分集合で,命題「PならばQ」の真偽についての説明があるが,この説明ではとても納得できない.しかも「以上で・・・論理法則上自然な約束であることが納得されたであろう」とはなんという書き方であろうか.納得するかしないかは読み手の判断であって,書き手が勝手に決めることではない.
「Pが偽のとき,『PならばQ』は真である」を納得してもらうように説明することは容易ではない.
◆たとえ話
「対応」の説明での「選挙人と被選挙人」のたとえ話はなんのために入れたのだろうか.対応の考え方はそんなにわかりにくい概念ではない.
理解を手助けするためのたとえ話なら,上記の「PならばQ」の説明にこそ必要だ.
◆「明らかに◯◯」という個所か少なからず見受けられる.むしろ多い.
私にとって,明らかではない個所がある.いったい何のために途中を省略するのか.説明が面倒なら本など書くなといいたい.
◆証明を省略している.
証明を演習問題としたり,読み手に丸投げすることは別にかまわないが,その解答を載せないというのは問題である.
◆くどい説明
説明すべきを説明するためにくどくなっているのなら構わないのだが,全体的に,要領を得ないくどさであると感じる.
くどいのがダメというわけではない.たとえば,橋本治の文章のくどさは嫌いではない(読むのは疲れるが).
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揚げ足とりの,こき下ろしな感想だが,腰を据えて読んでみてのことだから仕方がない.このエントリーの第一稿はもっとボロカスに書いていたが,夜中に勢いで書いたものだったので,ボツにした.
集合論に関して,まともに読んだ最初の本である.読み進めるうちに,わからなさと共にだんだん腹が立ってきて,いっそのこと(自分用の)教科書を書いてしまえとなった.他の本で学び始めれていれば,また違ったかもしれない.
2016年10月6日
2016年9月28日
「集合論」の販売サイトをAmazonに変更
集合論の販売サイトをDLmarketからAmazonへ変更した.→【集合論(数学で行こう)】
(ウインドウ右下の表紙画像付きのリンクも修正している)
DLmarketの方は,販売を一時休止にしているので,前回までのブログエントリのリンクをクリックしても表示されない.少なくともしばらくの間はAmazonでの独占販売である.
PDFからKindleフォーマットへの変換ができることを知らなかった.わかっていれば,第1版からAmazonで出版していたのだが.
Kindle for Macでサンプルを確認したところ,本文内のリンクが無効になっているようだ(他の端末でも無効かどうかはわからない).
(ウインドウ右下の表紙画像付きのリンクも修正している)
DLmarketの方は,販売を一時休止にしているので,前回までのブログエントリのリンクをクリックしても表示されない.少なくともしばらくの間はAmazonでの独占販売である.
PDFからKindleフォーマットへの変換ができることを知らなかった.わかっていれば,第1版からAmazonで出版していたのだが.
Kindle for Macでサンプルを確認したところ,本文内のリンクが無効になっているようだ(他の端末でも無効かどうかはわからない).
2016年9月26日
「集合論」第2版 販売開始
集合論の第2版がようやく完成した.
数日前より,ダウンロード販売サイトDLmarketにて,PDFファイルを販売している.→【集合論(数学で行こう)】(Amazonに変更しました→集合論(数学で行こう)
)
第2版で当初予定していたかたちになった.
本冊子の1つめの特徴は「定理・命題の証明を省かずに書いた」ことである.
定理の証明は数学の要諦であるから,それを省くなど道断である.殆ど自明な定理であっても,証明を省くのはダメである.例え1行で済む証明であっても省いてはいけないというのが私の考えである.
2つめの特徴は「図がない」ことである.
図は,理解のための便宜を図るものであって,本質ではないという考えを推し進めた結果である.
(本質ではないというのは言い過ぎかもしれないが,敢えてこういう表現をする)
円や楕円で集合をあらわすことが多いが,それに惑わされて,集合とは円で囲まれたものであるというようなとらえ方をされる場合があるらしい(出所不明の伝聞だが).それならばいっそのこと,図を書かずに,論理だけで示していくというのも一つの方法だと考えた.
ただ,図があった方がわかりやすいだろうから,今後,改訂を進める中で,図を追加していくかもしれない.
3つめの特徴は,いわゆる「全書式」の形式をとったことである.
集合論に限らず,殆どの数学の教科書は,いわゆる「講義式」で書かれている.悪くはないのだが,時折,どこからどこまでが定義で,どこからが定理で,証明がどこから始まってどこで終わっているのかが,つかみにくい場合がある.
教科書自体が著者の口述筆記のようになってしまっていて,定理の前提条件が離れたところにさりげなく書いてあったりする.一個所にまとめて書いていないので,要点をつかみづらく,自分用のノートがつくりにくいのである.
もう一つ,特徴というほどではないが,気をつけたこととして,「あきらかに何々である」という表現を使わなかった点を挙げる.
数学の専門家の書き癖なのか習慣なのか,「あきらかに何々である」とかけば,それが免罪符となって,途中をばっさりと切り捨て,好きなだけ省略してもいいようである.
なお,数理論理の基本的なことは既知として話を進めたので,本冊子ではそのあたりの解説はしていない.集合論を書くにあたって,内容を集合論に絞るべきとの考えからである.
数理論理に関しては,集合論の補足とするか,別冊子とするか,このブログで書くか,いずれ何らかのかたちでの説明は必要だと考えている.
数日前より,
第2版で当初予定していたかたちになった.
本冊子の1つめの特徴は「定理・命題の証明を省かずに書いた」ことである.
定理の証明は数学の要諦であるから,それを省くなど道断である.殆ど自明な定理であっても,証明を省くのはダメである.例え1行で済む証明であっても省いてはいけないというのが私の考えである.
2つめの特徴は「図がない」ことである.
図は,理解のための便宜を図るものであって,本質ではないという考えを推し進めた結果である.
(本質ではないというのは言い過ぎかもしれないが,敢えてこういう表現をする)
円や楕円で集合をあらわすことが多いが,それに惑わされて,集合とは円で囲まれたものであるというようなとらえ方をされる場合があるらしい(出所不明の伝聞だが).それならばいっそのこと,図を書かずに,論理だけで示していくというのも一つの方法だと考えた.
ただ,図があった方がわかりやすいだろうから,今後,改訂を進める中で,図を追加していくかもしれない.
3つめの特徴は,いわゆる「全書式」の形式をとったことである.
集合論に限らず,殆どの数学の教科書は,いわゆる「講義式」で書かれている.悪くはないのだが,時折,どこからどこまでが定義で,どこからが定理で,証明がどこから始まってどこで終わっているのかが,つかみにくい場合がある.
教科書自体が著者の口述筆記のようになってしまっていて,定理の前提条件が離れたところにさりげなく書いてあったりする.一個所にまとめて書いていないので,要点をつかみづらく,自分用のノートがつくりにくいのである.
もう一つ,特徴というほどではないが,気をつけたこととして,「あきらかに何々である」という表現を使わなかった点を挙げる.
数学の専門家の書き癖なのか習慣なのか,「あきらかに何々である」とかけば,それが免罪符となって,途中をばっさりと切り捨て,好きなだけ省略してもいいようである.
なお,数理論理の基本的なことは既知として話を進めたので,本冊子ではそのあたりの解説はしていない.集合論を書くにあたって,内容を集合論に絞るべきとの考えからである.
数理論理に関しては,集合論の補足とするか,別冊子とするか,このブログで書くか,いずれ何らかのかたちでの説明は必要だと考えている.
2016年9月20日
「集合論」第2版の進捗状況
「第5章 順序数」の原稿確認は概ね完了した.
既刊の第1章から第4章の間違い探しをしている.
また,「順序写像かつ単射であるが,順序単射ではない例」を追加した.
予定よりも少し遅れるが,第2版はあと2-3日で公開できる見込みだ.
既刊の第1章から第4章の間違い探しをしている.
また,「順序写像かつ単射であるが,順序単射ではない例」を追加した.
予定よりも少し遅れるが,第2版はあと2-3日で公開できる見込みだ.
2016年9月7日
「集合論」第2版の原稿書き
自著「集合論」に追加する「第5章 順序数」の原稿を確認している.
順序単射の命題3.1.4の証明がなんだかよくわからないことになっていたので,修正した.
あと,定理や定義の条件が抜けている個所もあったので,訂正.
しばらく間をおいて見直すと,色々見つかる.
順調にいけば,第2版は1-2週間で公開できる予定だ.
順序単射の命題3.1.4の証明がなんだかよくわからないことになっていたので,修正した.
あと,定理や定義の条件が抜けている個所もあったので,訂正.
しばらく間をおいて見直すと,色々見つかる.
順調にいけば,第2版は1-2週間で公開できる予定だ.
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