群・環・体の定義の前に,演算についてこれぐらい書いておいてもらわないと,私にはわからないので,自分なりに演算の定義をまとめておく.
拙著「集合論」を読まれた方には見慣れた書き方と思うが,私の「書式」には本文がほとんど無く,「定義・定理・証明・補足 」が淡々と続く.以下でもその方法を踏襲している(自分で「タナカ式」とよんでいます).
なお,集合論(今回の場合は「写像」)については既知であるとして説明している.
✅手元の iPhone で確認したところ, スマホモードではTeXコードが表示され,Webモードでは,数式の表示が一部うまくいかないようです.
演算
定義(演算).$X$ を集合とする.写像 $g:X\times X \rightarrow X$ を
という.
定義(積).集合 $X$ 上に演算 $g$ が定義されているとする.このとき,$\left(a,\, b\right)\in X\times X$ の像 $g(a,\, b)$ を
積といい
$$a\circ b$$
とあらわす.
補足.集合 $X$ 上に定義されている演算$g$ を,その積の記号を用いて
演算 $\circ$
とよくあらわす.
定義(単位元).集合 $X$ 上に演算 $\circ$ が定義されているとする.ある要素 $e\in X$ が存在して,任意の $a\in X$ に対して,$$a\circ e=e\circ a=a$$であるとき,$e$ を
単位元という.
補足.演算 $\circ$ における単位元 $e$ を
$0$
$1$
などとよくあらわす.
定義(逆元).集合 $X$ 上に演算 $\circ$ が定義されているとする.任意の $a\in X$ に対して,ある $b\in X$ が存在して,
$$a\circ b=b\circ a=e$$
であるとき,$b$ を「$a$ の
逆元」という.
補足.演算 $\circ$ における $a$ の逆元を
$-a$
$a^{-1}$
などとよくあらわす.
定義(可逆元).集合 $X$ 上に演算 $\circ$ が定義されているとする.任意の $a\in X$ に対して,$a$ の逆元が存在するならば,$a$ を
可逆元という.
定義(可換).集合 $X$ 上に演算 $\circ$ が定義されているとする.任意の $a\in X$ に対して,ある $b\in X$ が存在して,
$a\circ b=b\circ a$
であるとき,「$a,\, b$ は
可換である」という.
定義(結合律).集合 $X$ 上に演算 $\circ$ が定義されているとする.任意の $a,\, b,\, c\in X$ に対して,
$\left(a\circ b\right)\circ c=a\circ\left(b\circ c\right)$
であるとき,これを
結合律という.
定義(分配律).集合 $X$ 上に2つの演算 $\circ,\,\diamond$ が定義されているとする.任意の $a,\, b,\, c\in X$ に対して,
$$a\diamond\left(b\circ c\right)=\left(a\diamond b\right)\circ\left(a\diamond c\right)$$
であるとき,これを
分配律という.
-
以上である.
これらの定義は,群・環・体の定義の中で述べられることが多いが,私はそれを見て,どうにもスッキリせず,モヤモヤしていた.
モヤモヤの原因が何であるのかわからなかったのだが,試行錯誤するうち,演算に関する定義を抜き出して,先に述べてから,群・環・体の定義を書けば流れるように読めることがわかった.
やはり,わからないと思ったら,自分で再構成するほか無いようだ.
というわけで,次回は(多分)群・環・体の定義である.
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